ベネディクト・ロフ・マーシュ様のレビュー:MARTHの作品:MARTHのLast Resort

MARTHLast Resort

“MARTHの作品”へのみなさんのレビュー

レビューブログUNIGON PLANEにてMARTHをご紹介いただきました。

Composer

ベネディクト・ロフ・マーシュ 様

レビュー作品名
からだを失っても愛しているから チェロ&ハープ

オーストラリアのベネディクト・ロフ・マーシュ氏が運営するレビューブログ「UNIGON PLANE」というレビューブログにて、MARTHの「L’amore è – からだを失っても愛しているから  Cello & Harp」をご紹介いただきました。
日本語訳文での転載を許可いただきましたので、ご紹介させていただきます。
記事の原文はこちら

タイトル:MARTH – L’amore è – I Will Love You Even After I’m Gone Cello & Harp
ジャンル: ニューエイジ
Released: Sept 2018
レビューby: Benedict Roff-Marsh

MARTHの音楽をどのジャンルに入れるべきか、少し迷った。クラシックではない。(理由の一つは、時代が1825年以降だから)オーケストラではない。何とか押し込むのに適したジャンルの多くにあてはまらない。
というわけで、ニューエイジ(ワールドミュージックのサブセットとして)とした。また、MARTHもヒーリングミュージックと言っているので、ニューエイジが最もふさわしいと思う。

アルバム・タイトルにしっかり書いてあるように、これはチェロとハープの音楽だ。他の楽器は使っていないようだ。チェロがリードして、ハープがサポートしている。


220px-marth_28character29MARTHは日本出身だ。それはつまり彼をサポートする多くのマテリアル(素材)に私がほとんど精通していないということだ。

例えば、名前だけをとっても、Googleだけだと任天堂のアニメが検索される。そのキャラクターは何度も悲劇から立ち上がって同じ戦いを何度も繰り返しているようだ。だが、コンセプトにおいては、同じ要素をMARTHのインタビュー(PDF)に感じた。



MARTHのインタビューから引用

「ニューエイジ・ミュージックには2つの種類がある。ひとつは瞑想的、変容へと導くもの、α波が出るもの、スローテンポ、同じフレーズや神秘的なコードを何度も繰り返す。現実感を失わせるもの。私が創るものはそれとは少し違う。非常にテンポが遅いので、α波が出るとは思うが、大切なことはふるさとの感覚、ゆりかごのようなそれは長く伝わる世界の童謡のよう。子供のころの未知の、はかりしれないものに近かったころのやすらぎを表現しようとしている。聞くものに子供のころのやすらぎを思い出させるもの、無垢で純粋で何だかわからないころの…。それを私は癒しと呼ぶ。」


この音楽は形式的には西洋的、我々が、ポップ、ロック、オーケストラ音楽でよく聞く12トーンオクターブのスケールが使用されている。
でも、サウンドや、スペースが動くさまに、きわめてはっきりとアジアンスタイルの流れや手法が見て取れる。




62546beec05253e73824adac7a8c234a2291f178この流れ(フロー)は禅画に見るものと非常によく似ている。それは、なにかを指し示すことなしに、なにかを指し示そうとしている。

最小限の努力で、最大限の印象を与えている。それは私が自分の音楽でトライしても、MARTHのやっていることのほんの少しも表現できないことだ。

あの竹と昆虫の禅画は、表面上非常に簡素だが、その中に深く入っていくと、イメージがそれ自体世界になり、部分部分がいのちをまとうように見えてくる。そして、さらに珍しいことは、絵が幸福感をもたらすのだ。


MARTHの音楽は表面上、とても簡素に思える。大きなドラム音や、ドラマチックなストリングスの音色を期待しても、アンクール(かっこ悪い)と思うだけだろう。でも、メロディーが要所要所に流れるにつれ、やすらぎの場所を生み出し、私たちの気持ちが流れるに任せると癒しが生まれる。そういう意味で彼は的を得ている。

これ以上、私が言うことはもうないかもしれない。あなたはこの音楽をすでに気に入って、その流れを受け入れているか、気に入らなくて音楽を消しているだろう。(後者でないことを願うけど)


51qdqr2w5llMARTHの音楽が何に似ているかというと、ニューエイジ・瞑想系の音楽はたくさんあるけど、その多くは非常に浅く、からっぽだと私は感じている、

喜多郎の音楽に少し似ているかもしれないが、壮大な爆弾のようなアレンジではなく、メロディーラインの流れにおいて似ているかもしれない。

二人のコンポーザーは、同じ文化、同じマインドセット(意識構造)の出身だから、クロスオーバーがある。


先週、取り上げたことであり、ひとつ気になることは、その価格だ。バンドキャンプでは2,500円、オーストラリアドルでは、31.50ドル、米ドルでは22.41ドルになる。これが、トップ40のコマーシャルリリースでハイクォリティの作品ならなら32ドルは問題にならないだろう。

彼ら(レーベル)はこの音楽に少なくともジョッシュ・グローバンと同じぐらいの値段をつけているが、誰がそれを買うのだろうか?


一方、われわれインディーズのアーティストは、自分たちの価値を低く見ているのだろうか…。

そして、他の人たちに価値がより低いと言わせているのだろうか…。つまり、私たちは自分を小さくしているということだろうか?

もし、MARTHがこれを読んで、彼の決定プロセスについてなにか私たちを助けるために言ってくれるなら、喜んで聞いてみたい。

とにかく、これはラブリーなレコードだ。ぜひ、ゆっくり時間をかけて聴き、感動してほしい。
そして、また、MARTHが偶然この記事を読むことがあったら、彼が伝えたいと願う追加や説明を喜んで受け入れたい。

でも、おそらく、ここまで読んで、音楽を聞いたみなさんにそれは必要ないだろう。

この音楽を感じるだけで、十分だろうから。


レビュー by Benedict Roff-Marsh

ベネディクト・ロフマーシュ

カナダにイギリス人の両親のもと生まれる。イングランドに一時戻り、オーストラリアに移住して5年になる

銀行、エンターテイメント、セールス、ウェブなどの職についてきた。いつも音楽を聞いたり、創ったりしている。

転載元: UNIGON PLANE